書評
BOOK
2020年08月24日

【書評1】 独学の技法 山口 周

本書は、現在の情報に溢れている時代の独学の技法を示したものである。

著者は、コーンフェリー・ヘイグループのシニア・クライアント・パートナーを務めながら、文筆や哲学ワークショップを行っている。学部と大学院で哲学・美術史を学んだという特殊な経歴を活かし「人文科学と経営科学の交差点」をテーマに活動を行っている。慶應義塾高等学校在学時は、ほとんど授業に出席せず、美術館や映画館、図書館で時間を過ごしていたと話している。

私 菊岡は福井県小浜市という田舎に育った。算盤教室があり通ったが、学習のための良い塾はない(塾自体が当時は小浜市にはほとんどない)。通信教育は存在していたが、家が裕福ではなく、ほとんど独学で進めてきた。

学びは、与えられて始めるものではなく、自ずから必要として、独学から始めるものであるということを、体験として積んできた。

学びが与えられることを待っている人には、独学で己を高めていくという方法があることを知り、独学を学び方の一つに加え、独学を身につけていただければ嬉しいと思う。

本書の内容に戻る。

独学の目的は、知的戦闘力の向上である。今日では、情報はいたるところにあり、自分が必要とする情報を常にアクセスできるところに置いておく、どこにあるかを知っておくことが求められる。情報には蓄えるべきストック、つまり変化が激しい時代にも重要とされるものと、時代とともに流れる・進歩により変わっていくフローがある。知識は、有用ではあるが、不良資産になるものも多くある。

知識には、広さと深さが必要であり、それは人材としてはジェネラリストとスペシャリストに例えられる。T型人材は広さと深さを身につけている。ストックとフローを有し、学び続けている。

人生100年時代となり、人生は3毛作となってきた。新たな人生作り(二毛作、三毛作)に、新たな学びが求められる。

独学の方法として、以下のやり方を著者は推奨している。

  1. 戦略を作る:テーマ設定、何をインプットして何をインプットしないか
  2. 連続インプット:五感を使う、一次情報を同時に得る、熟考し熟慮するために読む、テーマとジャンルのクロスオーバーを行う(同じテーマでも違うジャンルを選び読む、ビジネスだけでなく歴史・哲学・心理・音楽・紀行などのジャンルを変える)
  3. 抽象化・構造化:連続インプットしたものを組み合わせる、新たな「問い」を考える・創る、感じたことの意味を考える、ジャンルを超えた一般的な意味を考える、自己の体験と組み合わせ一般化する
  4. ストックに変換する:引き出し可能とすること、メモに残す、人と話す

最後に、論語の一節を挙げている

「子曰く、学びて思わざれば則ち罔し(くらし)、思いて学ばざれば則ち殆し(あやうし)」

洞察しなさい、そして独善に陥ることなきように。

私は、コーチ業を行い人を支援し、またKiku塾を主宰し、学びの場を設けている。コーチ・Kiku塾と独学は矛盾せず、クライアント本人の自らの行動、学び(独学もその一つ)を促進していくことと一致していると考えている。

 

また、自らもコーチをつけて、洞察を深め、独善に陥ることを避ける努力を続けていきたいと感じさせられた書籍である。