【書評10】頭にきてもアホとは戦うな! 田村耕太郎
社会人としてスタートし、自分に自信が出てきた頃から、自分のやることが正しいと信じ、成功するから提案することを実行したいと推し進めてきたという自分がいた。
推し進めるため、大きなエネルギーを社内での説得活動などに使ってきた。
顧客に対するときの自分は社内とは全く違う態度や行動が取れるのに、社内での検討・内輪での検討になると、大きなエネルギーを使い、顧客の望むことを展開していきたいという強い思いで戦ってきた。
その自分の数多くの失敗がどこから発生していたのか、その対処はどうしたら良いのかを教えてくれる書である。
著者の田村耕太郎氏は、早稲田大学、慶応義塾大学大学院(MBA)、デューク大学法律大学院、エール大学経済大学院を修了し、オックスフォード大学AMPと東京大学EMPも修了。山一証券でM&Aを手掛け、政治家にもなり、今はシンガポール大学のリー・クワンユー公共政策大学院で教授を務めている。
著者は成功の道をまっすぐ歩いてきているように思えるが、実は数多くの失敗の中で経験したことを本書に記している。
◆無駄な戦いを繰り広げる人の特徴
- 正義感が強い
- 自信に溢れる
- 責任感が強い
- プライドが高い
- おせっかいである
◆アホとは戦わずになすべきこと
- 戦うのではなく、本当にすべきことに全力を尽くす
- 自分がコントロールできるものにエネルギーを注ぐ
- タイムコスト、タイムベネフィットを考える
- ”カッ”としたら(頭に来たら)幽体離脱
それでもアホ(実際にはアホではない)と戦わなければならない時はどうしたら良いのだろうか。
- まずは、小さな合意から積み重ねる。やりやすい小さな合意である。
- また、気まずい時こそ話しかける。これには勇気がいるが、気まずさが小さい時には小さな勇気で声かけられる。気まずさが大きくなる前に話しかける。
- 相手の気持ちを理解する能力を高める。
- 共通の利害を見つける、相手に利益を与える。
- 批判せず、リスペクトして伝える。
相手が「アホ」だと思っていると、上記の5つの行動は決して易しくないと私は感じます。
「アホ」だと思わず、「アホ」にも何か目的があり、違う面を見ていることを気づくことが良いのかもしれません。
コーチング・カウンセリングの逸話の中には、「アホ」と思わず、何かその人によく似た動物(象や、牛や、カバなど)と思って対応すると話しかけるのも容易になり、怒りなどの感情が起きなくなると言われています。
どうしても戦わなくてはならない時には、対峙しなくてはならない時には、自分ができる小さな行動から始めると良いのではないかと私は考えています。
また、相手の気持ちを理解する能力、共通の利害を見つけるには、コーチングのマインド・スキルが大変役立ちます。