書評
BOOK
2020年08月24日

【書評16】座右の古典 鎌田 浩毅

著者は、現役の京大教授であり、専門は地球物理学。奇抜なファッションで講義されていてテレビにも出演されている。

本書は「週刊東洋経済」で2009~2010年に1年間にわたり「一生モノの古典」として連載された50編をまとめたものです。古典1冊ずつを、「名文ピックアップ」「どんな本か?」「本文」「3行で要約!」の構成でわかりやすく紹介しています。

 

古典の読書には、何か重たい感じがして抵抗感のある方も少なくないと思いますが、本書をまず読んで、特に興味が湧いた書を深く読む、そして自分で考える、ということが可能になります。

もちろん、古典の名著ばかりなので、どれも素晴らしい本ですが、自分の中で優先順位がつけられるのだと思います。

 

さて、古典の読書には、4つの大きなメリットがあると記しています。

1)未来に対するビジョンが得られる

2)現代を読み解くキーワードが得られる

3)本質をつかむ訓練ができ、どうでも良いことに振り回されない

4)過去の生きざまを追体験できる

まとめると、

1冊の古典からは、著者が生涯をかけて試行錯誤の果てに得た知恵と処世術を得られること

 

50編の中で、わたしの気になった古典を記します。

  • スマイルズ「自助論」:福沢諭吉の「学問のすすめ」の元となる。人間の優劣は、その人がどれだけ精一杯努力してきたかで決まる
  • ヒルティ「幸福論」:人を幸福にするのは仕事の種類ではなく創造と成功の喜びである。毎日の習慣は幸福の実現に極めて重要である
  • ベルクソン「時間と自由」:自由行為は流れつつある時間の中で行われるもので、流れ去った時間の中で行われるものではない。今ここにある「流れつつある時間」を大切に。この時間を自分で掌握する
  • 神谷美恵子「生きがいについて」:もっとも必要なものは「生きがい」生かされている幸せである。他人をあまり意識せず「自分らしさ」をもっと出して良い。自己の生存目標をはっきりと自覚し、自分の生きている必要を確信し、その目標に向かって全力を注いでいく
  • マズロー「人間性の倫理学」:欲求の5原則
  • オルテガ「大衆の反逆」:大衆とは人類史が生み出した甘やかされた子供。人には2タイプあり、第一は自らに多くを求め進んで困難と義務を負わんとする人々、第二は自己完成の努力をしない人々・風のままに漂う人々
  • ハマトン「知的生活」:仕事のオン、と遊びのオフのバランスの取れた生活。稼ぐ(JOB)と働く(WORK)は異なる。働くは社会の中で役に立つこと。
  • エッカーマン「ゲーテとの対話」:一流のものに触れよ、自分に投資せよ。書物だけでなく経験が必要。
  • アドラー「人生の意味の心理学」:人は皆、自分の見たいように世界を見ている。思考のパターンによる思い込みが発生している。原因論は人を幸せにしない。自分の心の問題は、周囲との対人関係で解決できる。実社会でもっとも役立つ考え方である
  • フランクリン「フランクリン自伝」:時間を無駄にしない、13ヶ条の具体的点検項目
  • カント「啓蒙とは何か」:自ら招いた未成年の状態から抜け出ること。自分の理性を使い、書物を読み新しい情報を得たら自分なりに考えること
  • ショウペンハウエル「読書について」:多読は精神から弾力性を奪い去ることに繋がる。量では断然見劣りしても、幾度も考え抜いた知識であればその価値ははるかに高い。古典が然りであり、古典を読むこと。自分でかんがえていくこと。