書評
BOOK
2020年08月24日

【書評20】ファスト&スロー ダニエル・カールマン

著者は心理学者であり、ノーベル経済学賞を行動経済学の分野で受賞した。

本書を読んだのは、相当前であるが、

自己のマーケティング&セールスに取り入れ、

またKiku塾の講座にも取り入れている。

私たちは、毎日毎日、何時に起き、何を食べ、何を着て、

誰と出会い、何を話すかなど、何百何千もの意思決定を行なっている

人は、これほど多くの意思決定を行なっているため、

出来るだけ、そのエネルギーを使わずに意思決定を行なっている。

合理的であるかどうかを判断した意思決定であることはほとんどなく、

重要な複雑なことだけを、しっかり考えて意思決定している。

著者は、人は、2つの思考モードを持つとしている。

一つ目は、システム1 ファスト(Fast)で、

もう一つは、システム2 スロー(Slowである。

システム1 ファストは、

自動的に高速で働き、努力は全く不要か、必要であってもわずか。

自分がコントロールしている感覚はない。

システム2 スローは、

複雑な計算など、頭を使わなければできない困難な知的な活動。

しかるべき注意が割り当てられる。

システム1とシステム2には、相互作用がある

通常は、システム1が働いていて、

システム1から送られてきた、印象・意思・感情などの材料を

システム2が少し働き、最低限の修正を行い、自分が正しいと思って行動している。

システム1が困難に遭遇すると、システム2が応援に駆り出されて、

問題解決に役立つような、緻密で的確な処理を行う。

システム2は、あなた自身の行動を常に監視する技術を持っている。

システム1とシステム2は極めて効率的に作用するように出来ている。

一方で、システム1は、錯覚を起こす。

典型的な例として、一本の線の両側に矢印が書いてある図で、

(>ー<) と、(←→)では、同じ直線の長さでも、

長さが異なって見える(この文章中の直線の長さは同じではない)。

システム1は、衝動的で直感的でもある

また、システム1を制御するシステム2は、怠け者であり、

システム2が認知的に忙しいと、人はシステム1で判断して

利己的な選択を行いやすくなり、挑発的な誘惑に乗りやすく、

表面的な判断を行いやすくなる。

このことから、人は様々なバイアス、ヒューリスティックスを引き起こしやすい。

本書には、人が起こしやすい、様々なヒューリスティックスについて述べている。

いくつかの例を示す

・先行刺激の影響

・慣れ親しんだものが好き

・自分が見たものが全て

・フレーミング効果

・アンカー効果

・利用可能性

・もっともらしさ

・わかったつもり

・保有効果

・プロスペクト理論:参照点と損失回避

・4分割パターン

・滅多に起きない出来事

人は、このようなバイアス・ヒューリスティックスを起こすことを知っていることで

自己の判断・選択にどのような影響を及ぼしているか、

同様に、他者の判断・選択にどのような影響を及ぼしているかを

適切に考え、適切に意思決定する機会が増加する。

私は、バイアス・ヒューリスティックスを避けるために、

自己のシステム2が働きやすい、午前中(私は朝型人間)に

判断することや、難しい問題に取り組むことにしている。

また、一度仮決定したものは、朝に見直すと冷静になれる。

頭が、システム2を使い切ったな(システム2が疲れた)と感じたら、

単純作業を行うことにして、システム2を休ませる。

夜にセミナーをやるときは、その前の時間は、頭を休ませる時間をとることに

している。

行動経済学が、自己や他者の判断・選択について教えてくれることは大変多く、有意義である。