書評
BOOK
2020年08月24日

【書評21】スッキリ中国論 スジの日本、量の中国  田中信彦

現在の会社で、中国人と働く機会が多い。

 

ある中国人は、常に部下に勝ちたがり、自分が一番でないと気が済まない。

少しぐらいのルール違反は気にしない傾向にある。

列に並ぶことは基本やらない。

懇談会や忘年会などでは食べきれないくらいの量を頼む。

 

不思議な行動を取る人である、と感じてきた。

その理由が本書を読めば、

スッキリしないが、違いが理解できる。

 

私の所属する社長室にも中国人メンバーが加わり、

顧客に中国人を迎えることが増えてくる。

中国人の理解を深めることが必須になってきたことが

本書が売れている理由でもあるだろう。

 

前提が長くなったが、書評に入る。

 

著者は、1983年に早稲田大学を卒業後、1990年代から中国事業に取り組み、

コンサルタントとして、リクルートの中国事業や、大手服飾チェーンの中国事業など、

多くの企業の中国ビジネスをサポートしている。

 

結論として、日本人は「スジ」で考え「スジ」を通したがる

あるべき論が重要

 

一方、中国人は、「量」で考える

「あるか、ないか」の現実論であり、あるなら「量」を重視する。

また、「量」で考えるので、許容範囲が広く、細かいことより大体で良い。

 

本書には、具体的な例が、ふんだんに記載されている。

その通り!と、心当たりがあることが沢山出てくる。

 

いくつかの例を示す。

 

・お金の使い方

スジの日本

お金を使うか使わないかは論理で判断、使うときに理由が欲しい

節約は美徳(お金持ちであっても)

量の中国

今、払えるかどうかで判断する(理由は必要ない)

お金持ちは太っ腹であるべきで、どんどん使うべき。社員にご馳走するべき。

 

・犯罪・ルール違反

スジの日本

10円のものでも窃盗・万引きは犯罪

量の中国

社会的影響が大きくなければ犯罪ではない。

窃盗も500元(8000円)以下は犯罪にならない

(驚き! だから少しぐらいならとルールには従わない)

 

・自己統制

スジの日本

世間体や社会規範を重視する

量の中国

自分で律する人になる。自分でできていると誇示する。自分は正しい。

(自分ができていなくても、できていないことは認めない。

他人は正しくないが前提にある)

 

・評価・自尊心

スジの日本

動いて、良い結果を出したら高い評価。

動いてから、感謝されて、自尊心が高まる

量の中国

好意の先払いを求める(量が先)。

高い評価を得たら動く、自尊心が満たされたら動く

自分にとってのメリットが大切で、自分の力が他より優れていることが大切

 

・仕事と収入

スジの日本

どんな職業であっても、誇りを持つ。尊ぶことができる

量の中国

お金の量が稼げる職業が素晴らしい。

ブルーカラーにはなりたくない、尊敬されない。

 

スジの日本、量の中国、どちらが正しいではなく、

それぞれの特徴を理解し、お互いが気持ちよく、協力していくところを

求めていく。

 

また、役割分担もあるだろう。

 

それぞれのメリット・デメリットで、書評を締める。

 

スジの日本

メリット

・行動が計画的になる

・仕事の前処理をするので、スムーズに進むことができる

・仕事の仕組み化が得意

・行動後の問題の発生率が低い

・リーンが素晴らしいので、生産性が高くなりやすい

 

デメリット

・決断に時間がかかる

・前例にとらわれやすい、変化しにくい

・心配過多で杞憂に終わることが少ない

・無駄が生まれやすい(心配のため・予防のための仕組み)

・オーバースペックになりやすい(万一のことを考えて準備)

 

量の中国

メリット

・決断が早い

・現状の変化に対し、臨機応変に行動する

・結果的に効率的になることが多い

・問題が発生してから動き対応するので、うまくいっているときは無駄が多い

(うまくいっているときに改善はやらない)

 

デメリット

・規範性が低い、人によって言うことが変わる

・継続性に乏しい、一つのことを続ける根気にかける

・ものごとの本質を追求する姿勢が弱い

・同じ失敗を繰り返しやすい

・ファットが素晴らしいので、無駄が多くなりやすい

・仕組み化が苦手、仕組み化すると自分が目立たなくなるのでやりたがらない

・面子・自尊心が高まらないと動かない

 

全ての日本人が同じではないように、全ての中国人も同じではない、

ということも忘れるべきではない(これもスジ論の日本人だ)と思った。