【書評23】アドラーに学ぶ部下育成の心理学 小倉 広
著者 小倉さんのアドラー心理学に基づく人間学を
実践に活かすことを目指して、多数の本を出版されている。
小倉さんが唱えるアドラー心理学に基づく教育論は、
「ほめない、叱らない、教えない」である。
そして、相手が自分の力で課題を解決するように支援する、
”勇気づけ”を行うことである。
なぜ、「ほめない、叱らない」なのか?
「ほめる(褒める・誉める)、叱る」には上下関係や支配関係が存在している。
本人は無意識的であっても、よくしてあげよう!
という上下関係・支配関係が存在しているのである。
例えば、野球選手(だった)イチローが、全盛期にヒットを打ったら、あなたはほめるだろうか?
当たり前と思う。
自分の子供がヒットを打ったら、どうだろうか?
どんな言葉をかけるだろう。
「ほめる、叱る」と”勇気づけ”の違いは何か?
ほめると勇気づけの違いは、
「YOU(あなた)メッセージ」と「I(わたし)メッセージ」である。
例えば、部下が作ってきた資料の出来栄えが良かった時、
ほめる:やるじゃない、良い出来栄え
→つまり、You あなた(の資料)はどうだ
勇気づける:とても読みやすいね、相手の立場を考えた工夫がなされているね
→つまり、I わたしはこう思う
叱らずに勇気づけるとは何か?
このやり方は、「I(わたし)メッセージ+質問」である
例えば、部下が作ってきた資料の出来栄えが今ひとつだったとき、
・叱る:60%くらいじゃない。まだまだだね。ここがダメだね。ここを直しなさい。
・勇気づける:わたしはこの点が良いと思う、さらに良くするにはどうしたら良いだろう?
○○という見方をくわえてみてはどうだろう?
お客様がこれを見たら、何て思うだろう。お客様の嬉しいことは何だろう?
そして、教えない人材育成の基本形は、
What(何を)は一緒に設定する(上長だけが設定するのではない)
How(どのように)は部下に委ねる
By when(期限)は一緒に合意する
部下が、どうしたいか、聞いてきたら、
必ず、部下に「あなたはどうしたいか?」を尋ねる。
答えは部下が持ってくるというスタンスで臨む。
上長は部下に対してポジティブな期待をする。
ポジティブな期待をしていると、ポジティブな期待が実現する。
逆にネガティブな期待をしていると、ネガティブな期待が実現することになる。
上長は部下の成長を支援するが、部下が学び体験し成長するかどうかは、部下の課題である。
上長が部下の課題をとってしまっていては、部下が育たない。
組織の成果のためだと信じて、部下の課題を奪っていないだろうか?
さて、わたしも、
かつてはスピード第一だったため、部下の課題を奪っていたことが多々ある。
一方、全然できない上司であるが人柄は良い人だなと思っていた上長は、
実は、わたしに全部任せてくれて、わたしの成長を支えてくれた大人物である。
当時は、全く気付かず、俺が自分でやったと高慢ちきであったことを今は反省し、
任せていただいた先輩たちに大変感謝している。
現在の職場では、視点を与えたり、新しい考え方を体験させたりするが、
自分で詳細の手を動かすことは極力行なっていない。
Kiku塾の講座・ワークショップでも、教えずに体験していただき、
内省から学んでいただくことを基本形にしている。
アドラー心理学に学ぶことは多く、現実の世界で取り入れられることが多い。
現実の世界で最も役立つ、アドラー心理学に基づくリーダーシップや
コーチング、人材育成など、どんどん広げていきたいと思っている。
学び・実践する人が増えれば、Happyなチーム・組織が広がっていくと確信している。