【書評11】Zone to Win ゾーン・マネジメント ジェフリー・ムーア
企業活動を4つのゾーンに分類して、それぞれを他と独立して進め管理すること。
現在は、企業の存続に対して、破壊的変化が自らとは違う業界から突然やってくることがある。
企業は地位を確立した現在のコアのビジネスモデルを変えられないからである。
破壊的な変化に対応する必要性を感じているにも関わらずコアのビジネスモデルを変えられないジレンマにどう対応していくかを示している。
ビジネスだけでなく、自己成長・人材育成にも当てはめ、キャリア変化を最後に個人的意見として記載した。
著者は、マーケティングでは大変有名な書「キャズム」を出版、その後キャズムを超える「トルネード」を出版し、2017年の最新作が「ゾーン・マネジメント」である。
イノベーションを持続的と破壊的の2軸に分け、また投資と収益の2軸に分けた、4つのゾーン(2X2の4つのマス)に分けて、独立して進めて管理することを推奨している。
- 「持続的イノベーション」x「 収益パフォーマンス」⇨パフォーマンス・ゾーン
- 「持続的イノベーション」x「 支援型投資」⇨プロダクティビティ・ゾーン
- 「破壊的イノベーション」x「収益パフォーマンス」⇨トランスフォーメーション・ゾーン
- 「破壊的イノベーション」x「 支援型投資」⇨インキュベーション・ゾーン
- パフォーマンス・ゾーンは「既存事業で成果を出す」ゾーン。業績のエンジンである。投資は翌会計年度で確実に回収し、堅実な管理と部門別売上利益管理を行う。規模の拡大は攻めにつながる
- プロダクティビティ・ゾーンは「生産性を上げる」ゾーン。コストセンターであるスタッフ部門などが該当する。経営資源を節約する、コストを削減する。またシステム投資により効率的なサービスを実行することも該当する。特に全体最適を優先し、速やかに実行する。寿命末期の業務やサービスはやめる。このゾーンには、6つのテコがある。それは集中化、標準化、モジュラー化、最適化、測定、アウトソース。現状の些細なことにこだわり、やめるべきことをやめないことが最も避けるべきことである。
- トランスフォーメーション・ゾーンは「新規事業を拡大する」ゾーンである。CEO直下におき、2−3年で投資を回収していく。今後の拡大のために重要なゾーンであり、インキュベーション・ゾーンから有望なものを絞り込み、投資していく事業となる。
- インキュベーション・ゾーンは「新規事業を育む」ゾーン。3~5年で投資回収する。複数プロジェクトを準備して臨む。技術開発と市場開発は分けて考え、2兎を追い求めすぎない。育成中のビジネスにも全社基準の義務を負わせて検討対象として、良いものはトランスフォーメーションに移していく。
長期にわたって成長を続けている企業は、少しずつ変化しているように見えるが、その内部では、上記のような4つのゾーンに自らの取り組みを分けることができ、コア領域の深耕、周辺領域への拡大あるいはコア領域を変更しているのであろう。
自分の働く会社は、この4ゾーンに既存事業や新規プロジェクトを当てはめてみると、どうなっているだろうか。自分の部署はどうだろうか、と考えてみると思考が深まるとともに実践できることがあると思われる。
また、この考え方を、自己投資や人材育成に当てはめてみるとどうであろうか?
かつての自分を考えると、営業からキャリアをスタートして、その中で学び成果を高める(パフォーマンス・ゾーン)とともに、現場を通じたマーケティングや統計解析・ITスキルやプレゼンスキル等に取り組み(インキュベーション・ゾーン)、マーケティング部門に異動。英語が必要と感じ、英語学習をインキュベーション・ゾーンに置いて朝活で学んでいったことがグローバル業務に取り組むこととなった。また行動心理や購買心理等をインキュベーション・ゾーンとして学んできた。マーケティングについては勉強会(Kiku塾)を主宰し、メンバーに指導することで自己および組織の生産性を上げる(プロダクティビティ・ゾーン)ことで、グローバルの仕事や事業開発の仕事(トランスフォーメーション・ゾーン)の時間にあてることが可能となり経験を積むことが出来た。Kiku塾はプロダクティビティ・ゾーンとして捉えていたが、人材育成・教育は自分にとってはインキュベーション・ゾーンでもあり、教育研修デザイン、ファシリテーション、行動科学、応用行動心理学等の知識・実力を高めるトランスフォーメーション・ゾーンにうつり、これがパフォーマンス・ゾーンに変わってきている。
自己投資として、現在の業務に必要と思われる周辺知識に興味をもち、4つのゾーンとして考え、学びを続けることも人生100年時代に必要なことと捉えることができる。
人の成長にも、ゾーンマネジメントは当てはめることができると感じた一冊でもあった。