【書評46】「イノベーションのジレンマ」 クレイトン・クリステンセン
ハーバード・ビジネス・スクールのクリステンセン教授の名著
『イノベーションのジレンマ』
かつてのイノベーターであり、
現在優良な経営を行なう大手企業は、
破壊的イノベーションに直面したとき
「イノベーターのジレンマ」と呼ぶべき状況に陥り、
業界リーダーの座から転落するという傾向を
さまざまな業界の例で示している。
私は製薬企業で育ち、新しい医薬品・医療技術が
古い医薬品・医療技術を淘汰することは
人類の健康にとって必要なことであり、
製薬企業にとって「イノベーションのジレンマ」は
避けれらない。
大きな製薬企業は、ベンチャーなどの買収によって
自分たちが陥っている「イノベーションのジレンマ」を
カバーしている。
これからも必ず発生する「イノベーションのジレンマ」
クリステンセン教授の教えの輝きは失われない。
新しい技術のほとんどは、
製品の性能を高めるもの「持続的技術」
個々の業界における技術的進歩は、
持続的な性質のものがほとんど
「破壊的技術」
破壊的技術は少なくとも、
短期的には製品の性能を引き下げる効果を
持つ技術。
破壊的技術を利用した製品は、
通常は低価格、単純、小型で
使い勝手が良い場合が多い。
イノベーションのジレンマを起こすのは、
破壊的技術である。
優良企業は顧客の声を聞き、
自社の主力市場であり、
最も収益増加を見込める
持続的イノベーションの分野に投資を集中する。
持続的イノベーションで
製品の性能を向上させていくと、
ついには製品が顧客の求める
性能に追いついてしまう。
すると、性能は劣るものの、
異なる価値を提供する製品が現われて、
破壊的イノベーションが起こる。
破壊的イノベーションの市場が
徐々にその市場を取り込んでいき、
破壊的イノベーションの市場で
優位にたった企業が、
その市場の新たなリーダーとなる。
本書では、ディスクドライブの小型化
(14インチ、8インチ、3.5インチ)を示している。
他に劇的に変わったものとして、
音楽を聴く イノベーション
レコード→CD→iPad→Spotify
写真をとる イノベーション
フィルムカメラ→デジタルカメラ
一眼レフ→ミラーレス→携帯電話
【破壊的技術で成功するには?】
①破壊的技術はそれを必要とする顧客を持つ組織に任せる
破壊的技術に直面した経営者は、誰よりも早く、
破壊的技術を商品化する必要がある。
その際に重要な事は、独立した組織をつくり、
新しい顧客の中で活動をさせること。
1つの企業の中で、2つのコスト構造や
収益モデルを共存させる事は難しく、
「別々の組織」で「別々の顧客」を追及する。
②試行錯誤を繰り返しながら事業化を進める
破壊的技術による製品がどの様に使われ、
その市場がどのような規模になるかは事前に予測することはできない。
繰り返し試行錯誤できるように、事業プランを立てる。
まずは行動し試行錯誤する。
③組織にできること、できないことを評価し、
それができ、かつ前向きになる組織で実行する
変化に直面したとき、それに取組む能力が
自社にあるか否かを判断する必要がある。
資源(人材、技術等)、プロセス(商品開発や製造プロセス等)、
価値基準(商品アイディアの良否などを判断する基準)の3要因で決める。
人材資源は、訓練することで能力を高めることができるが、
プロセスや価値基準は変えにくい。
組織の能力が不足している場合、
新しい仕事に適した別の組織を買収するか、
独立した小さな別組織を新設し、
その中で新しいプロセスや価値基準を育てる。
④破壊的製品が評価される新しい市場をみつけるか、開拓する
存在しない市場は分析できない。
将来大きくなる市場はデータがなく、魅力なく映る。
破壊的製品の特徴が評価される市場を見つける。
使用場面や体験を創り出す。